歯科医院で働いていると、スタッフの連携や効率を重視するあまり、歯科衛生士が「つい」医師の業務を手伝ってしまうケースがあります。
でも、それは違法行為(越権行為)に該当する可能性があること、ご存知でしょうか?
この記事では、歯科衛生士の業務範囲・やってはいけない違法行為・気をつけるべきケースについて、分かりやすく解説していきます。
歯科衛生士の業務範囲は法律で決まっている
歯科衛生士は歯科衛生士法により、次の3つの業務に限定されています。
- 歯科予防処置(スケーリング、フッ素塗布など)
- 歯科診療補助(医師の指示のもとで行う補助)
- 歯科保健指導(TBIや生活指導など)
これ以外の医療行為を行うことは違法であり、最悪の場合、医師法違反や歯科医師法違反に問われることもあります。
歯科衛生士がやってはいけない違法行為・5選
① 麻酔行為
→ NG!
原則として歯科衛生士が皮下や歯肉への局所麻酔を打つことは出来ません。
しかし実は、歯科衛生士でも“麻酔が打てる”ようになる方法があります。それが「臨床歯科麻酔認定歯科衛生士」という認定資格です。これは日本歯科医学振興機構が認定しており、歯科衛生士が麻酔に関する知識と技術をしっかりと習得したことを証明する資格です。
もちろん、実際に麻酔を行うには歯科医師の指示が必須ですが、この資格があればより安全に、専門性の高いケアが可能になります。
さらにステップアップを目指す方には、「日本歯科麻酔学会認定歯科衛生士」という上級資格もあります。こちらは全身麻酔や静脈内鎮静法を行う医療機関での経験や発表実績が必要とされる、より高度な資格です。
麻酔の知識と技術を深めたい歯科衛生士さんにとって、大きなキャリアアップのチャンスとなるでしょう。
参考資料:一般社団法人日本歯科医学振興機構
② 切開や抜歯などの外科処置
→ 歯周外科処置やインプラントのオペにおいて、器具の受け渡しはOKでも、歯肉の切開・縫合・抜歯の介助はNGです。
【歯科衛生士ができること】
- 器具の受け渡し
- 患者さんの体位調整や声かけ
- 吸引(バキューム操作)
- 術野の明示(ライト操作や鏡での視野確保)
- 滅菌物や材料の準備・管理
これらは、診療補助として認められている「衛生士業務の範囲内」です。
【NGなこと:法律上できない業務】
- 歯肉の切除
- 骨の削合、インプラントの埋入など医療行為に関わる操作
これらは明確な診療行為(医療行為)であり、歯科医師のみに許可された行為です。
たとえ「介助」であっても、直接的に術野に手を出すことは法律(歯科医師法)違反となります。
歯科衛生士は、外科処置時のアシスタントとして非常に重要な役割を担っていますが、
直接的な医療行為に関与することはできません。
③ 診断や治療方針の決定
→ 「虫歯があるので次回削りましょう」「インプラントの方がいいですよ」といった発言は、診断行為にあたります。
日々の診療の中で、患者さんから
「この歯って虫歯ですか?」
「インプラントにした方がいいですか?」
と聞かれること、ありますよね。
でもそこで、うっかり 「虫歯なので削りましょう」「抜歯してインプラントにしましょう」 と言ってしまうと…
「診断行為」 に該当し、法律違反(歯科医師法違反)となる可能性があります。
【診断行為とは?】
診断とは、
- 口腔内の状態を診て病名を決めたり
- 今後の治療方針を提案・決定したりする行為のことです。
これは歯科医師だけに許された医療行為であり、
歯科衛生士や助手が行ってはいけません。
【NG発言例】
- 「この歯、虫歯ですね」
- 「神経とった方がいいです」
- 「ブリッジよりインプラントの方が長持ちしますよ」
- 「次回は削る治療になりますね」
→ これらはすべて“診断・治療方針の決定”にあたるためNGです!
【OKな言い回し例】
- 「気になる箇所があるので、先生に診てもらいましょう」
- 「治療内容については、医師から詳しくご説明がありますね」
- 「このあと先生が診断して、最適な治療方法を決めますね」
患者さんに寄り添いつつ、法律を守った対応を心がけましょう。
④ 補綴物(クラウン・インレー等)の調整・装着
→ 技工物の装着・調整・咬合チェックは医師の仕事です。
衛生士が行うのはNGです。
【補綴物の装着・調整はなぜ歯科衛生士ができないの?】
クラウンやインレーなどの補綴物(ほてつぶつ)は、患者さんのお口に合わせて精密に作製された技工物です。これらを最終的にお口へ装着し、咬み合わせを調整する行為は、歯科医師のみが行える医療行為とされています。
■ 歯科衛生士に禁止されている主な行為
- 技工物を直接咬合調整する(かみ合わせの確認・調整)
- クラウンやインレーなどのセメントでの装着
- 技工物の適合チェック(フィットしているかの確認)
これらは診断に基づく診療行為であり、歯科衛生士法・歯科医師法によって、歯科衛生士が行うことは禁止されています。特に咬合調整や装着は、わずかな誤差が患者さんの不調や再治療につながるリスクがあるため、歯科医師の専門的な判断が不可欠です。
⑤ レントゲンの撮影や診断
→レントゲンの撮影・診断は歯科医師にしかできません。
【レントゲン撮影は誰ができる?歯科衛生士の業務範囲を正しく理解しよう】
歯科医院で行われるレントゲン撮影には、法律で定められた資格が必要です。歯科衛生士がどこまで関われるか、正しく理解しておきましょう。
【診療放射線技師法に基づく業務の制限】
- レントゲン撮影・診断は、医師・歯科医師・診療放射線技師のみが可能
- 歯科衛生士・歯科助手が撮影を行うと、診療放射線技師法違反になる可能性
- 指示した歯科医師にも責任が及ぶケースも
【歯科衛生士ができるレントゲン関連業務】
- 撮影の事前説明
- フィルムの準備や位置決め
- 患者のレントゲン室への誘導
撮影や読影(診断)は歯科医師や放射線技師の業務です。現場では明確に役割分担し、安心・安全な歯科医療を提供しましょう。
トラブルになる前に…気をつけるべきケース
現場では「歯科医師が忙しい」「スタッフが少ない」といった理由で、衛生士が越権行為を求められることがあります。
もしトラブルや内部告発があれば、歯科医院だけでなく衛生士本人にも責任が及ぶことになります。
違反行為がもたらすリスク
実際にあったケースでは、以下のような事態が起こっています。
- 保健所による調査
- 業務停止・免許剥奪
- 懲役や高額の罰金
- 歯科衛生士の処分(懲戒、解雇など)
つまり、たった1回の越権行為が、あなたのキャリアを左右する可能性もあるのです。
自分を守るために今できること
歯科衛生士として、安全かつ安心して働くために、次のことを意識しましょう。
- 不明なことは「やる前に」必ず確認する
- 口腔内での行為は特に慎重に
- 越権だと感じたら医師に相談する勇気を持つ
- 違反リスクをチームで共有する
誰かの「これくらいやっていいよ」は根拠になりません。
大切なのは法的に正しいかどうかです。
まとめ:衛生士は「できること」と「やってはいけないこと」の線引きが大切
歯科衛生士は、国家資格を持つ医療職です。
だからこそ、自分の業務範囲を正しく知り、守ることが大切です。
もし今、医院内で「これってやっていいのかな?」と不安なことがあれば、一度確認してみてください。
あなたの行動が、患者さんの安心、医院の信頼、そして自分の将来を守ることにつながります。
この記事が、同じ衛生士仲間の一助になれば嬉しいです。
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